Fabrice MILLISCHER / ファブリス・ミリシェー

ファブリス・ミリシェーは、2007にミュンヘン国際音楽コンクールで優勝すると、ヨーロッパで最も才能のあるトロンボーン奏者の一人としての名声を確かなものにした。難関なことで知られる同コンクールの歴史の中で、トロンボーン部門の初めての優勝者である。現在33歳のミリシェーはプロの音楽家の間だけでなく、一般のクラシック音楽愛好家の間でも知名度が高い。

ミリシェーはトゥールーズ音楽院で音楽を学び始めた。子供のころから音楽のある環境で育ち、まずピアノを習い、次いでチェロ、そしてトロンボーンに行き着いた。トゥールーズ音楽院ではチェロとトロンボーンの両方を学び、卒業試験ではいずれも最高得点をマークした。チェロとトロンボーンのどちらを選ぶかを決めかねたミリシェーはリヨン音楽院に入学し、トロンボーンのマスタークラスでミシェル・ベッケおよびアラン・マンフランに師事し、またダニエル・ラサールのもとでサックバットのマスタークラスを受講した。そのかたわら、パリ国立高等音楽院において、フィリップ・ミュレール、ロラン・ピドゥ、グザヴィエ・フィリップのもとでチェロの修行を続けた。

2006年には、アウレリエン・オノレー、ジャン・フィリッ プ・ナヴレ、ファビエン・ドルニとともに、トロンボーンカルテット「カルトボーン」を結成。「カルトボーン」はバロックから現代にいたるまでのトロンボーンの進化を音楽で表現することを活動方針としている。

ミリシェーは、ジョルディ・サヴァール指揮の「ル・コンセール・デ・ナシオン」、ダニエル・ラサールおよびジャン・ピエール・カニャック指揮の「サクブティエ」、ロランス・エキルベイ率いる「インスラ・オーケストラ」といった著名なバロック管弦楽団のツアーにもたびたび同行している。またソリストとしても人気が高く、ウィーン室内管弦楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団、ロシア国立エルミタージュ交響楽団、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、カンヌ交響楽団、ウクライナ国立管弦楽団とも共演。自身のツアーでは、ワシントン、北京、東京、ソウル、ミュンヘン、ジュネーヴ、パリなどで公演している。さらに、「イースタン・トロンボーン・ワークショップ」「エプシヴァル」「ドンブ金管楽器音楽祭」「リムー金管楽器音楽祭」といった各地の管楽器フェスティヴァルにも参加している。

2008年以降は、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団で首席トロンボーン奏者を務めている。

音楽への関心も高く、トロンボーンのための楽曲作りにも貢献している。ミリシェーのために作られた現代音楽作品としては、ジャン・ギユー作曲の「トロンボーンとブラスアンサンブルのためのコンチェルト」、パトリック・ブルガン作曲の「トロンボーンとオーケストラのためのコンチェルト」（別名「ルシファーの失墜」）、エティエンヌ・ペルション作曲の「リブレット」、アラン・セロ作曲の「野性の呼び声」などがある。

2007年にミュンヘン国際音楽コンクールで優勝する前には、2005年にブダペスト国際トロンボーンコンクール、2006年にはトゥールーズ・ バロック・トロンボーンコンクールで入賞。2009年からはAFAA（芸術活動に関するフランス協会）が実施している、若手音楽家奨励を目的としたプログラム「デクリック」に参加している。また同年には、米国芸術文学アカデミーからどう銀メダルを授与された。

2011年には、フランスのクラシック音楽大賞である「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク・クラシック」で「最優秀若手ソリスト賞」をトロンボーン奏者として初めて受賞した。また同年、フランスの権威ある音楽大賞「シャルル・クロ・アカデミー」でグランプリを獲得。

ミリシェーは、若いながらも、各地の音楽大学からトロンボーンの教授として引く手あまたとなっている。2008年にはパリのポール・デュカス音楽院にて教鞭をとり、2009年にはドイツのザール音楽大学でトロンボーンの教授に就任し、ドイツで最年少のトロンボーンの教授となった。また、フランスその他のヨーロッパ、ワシントン、北京、ケベックなど世界各地からマスタークラスの指導に招かれている。

現在はフライブルク音楽大学およびパリ国立高等音楽院でトロンボーンの教授を務めている。

現在、〈アントワンヌ・クルトワ〉のアーティストとして、“レジェンド420 NSBHST”を愛用している。

ファブリス・ミリシェーのインタビューページ（2018年7月）